我は、おばさん

 

『違国日記』の槙生は、執筆に没頭すると同居中の姪のことなどすっかり忘れて「違う国」へ行ってしまう。弁護士の塔野に問われて、物語はここではないどこかへ自分を匿ってくれる友人のようなもの、初めての「違う国」に連れて行ってくれるようなものだ、と言う。小説や漫画や映画といった物語を必要とせず育った塔野は、自分にとっては「勉強」がそうだったかもしれない、と答える。そこにいる間は、他のことを考えずに済む。そこにいる間は、「違う」「別の」秩序に救われる。(pp.96-97)