風が強く吹いている

風が強く吹いている

風が強く吹いている

風が強く吹いている (新潮文庫)

風が強く吹いている (新潮文庫)

あの走りを見てくれ。走るために生まれた存在のうつくしさを。
悔しさも羨望も軽々と凌駕する姿。べつの生き物のようだ。重力に縛られ、酸素の供給に汲々とする俺との、なんというちがい。
(p.312)

完全なる美と力をまえにして、できることは無に等しい。それを思い知らされるのはつらい。つらいけれど、見つめ、求めずにはいられない。むなしいと言い表すほかにない葛藤が、たしかに心に生じる。
「努力ですべてがなんとかなると思うのは、傲慢だということだな」
(p.592)

思いを言葉にかえる力。自分のなかの迷いや怒りや恐れを、冷静に分析する目。
(...)俺に欠けていたのは、言葉だ。もやもやを、もやもやしたまま放っておくばかりだった。でも、これからはそれじゃあだめだ。
(p.329)