オバマショック

オバマ・ショック (集英社新書 477A)

オバマ・ショック (集英社新書 477A)

目次
Finally!(やっとだよ!) 町山智浩
第1章 オバマがチェンジ(変革)するもの
     レーガン連合の28年
第2章 失われた8年
     ブッシュとは何だったのか
第3章 アメリカン・ドリームという博打
     サブプライムと投機国家
第4章 覇権国家の黄昏
     衰える軍事、経済、文化のヘゲモニー
第5章 異端児か、救世主か
     オバマが選ばれた理由
終章  彼の「強運」は世界の見方なのか
     オバマの未来、アメリカの未来
アメリカと町山智浩さん双方への注文 越智道雄

対談形式で、章ごとに注がついている。

知りたいことを教えてくれる、深い理解と膨大な知識を読者に無理なく伝えてくれると思わせる丁寧さがある。わかりやすいから理解できるほど事は単純ではない。敷居の低さの向こうに、ぐっとつかんで放さない魅力みたいなものに感染する。


p.68
越智 世論調査というのが産業として最初に出てきたのがアメリカですね。トクヴィルは、アメリカの社会をこう分析しています。アメリカ人は基本的に個人が平等だと固く信じている。これは、階級序列がある(当時の)ヨーロッパにはあり得ない考え方だ。つまり、ヨーロッパに個人は存在しないが、アメリカには個人というものがある。しかし、個人というのは孤立せざるを得な存在であり、それゆえに、「隣のヤツが何を考えているのか分からない」という不安に陥る。だから、世論というものが求められる。この、世論というものが多数派の暴力につながっていくことが、アメリカが抱える最も危険な要因だ——ということを、1830年代にトクヴィルは言っているわけですね。世論調査会社が起業するのはそれからずっと後年になりますが(1935年、ジョージ・ギャラップが起業)、トクヴィルが考えた世論の横行がまさに現実になっている。
町山 1972年の大統領選でもメディアは負けました。主要メディアがベトナム戦争に反対する報道を展開していたのに、ニクソンが再選されてしまった。主流メディアがサイレント・マジョリティに負けてしまった。

p.76
越智 方言でしかしゃべらなかったというのは、そういうことですよ。日常の感情言語だけを使っていたら、ほんとうに狭い世界しか見えないわけで。公的な言葉を使うことによって、そこに歴史意識が入ってくる。...