哲学者とオオカミ

哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン

哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン

 職業の選択がまさしくこの欠けているものの表現であることは、ほとんどまちがいない。純粋な数学や理論物理学といった高度な範疇をのぞいては、哲学以上に非人間的なものはほとんど想像できない。冷たく、水晶のように透明な純粋さをもって、ひたすら論理をあがめ、荒涼として冷たい理論と抽象の山頂をめざしそうとする決断。哲学者であるということは、根こそぎにされた存在なのだ。(...)哲学は人間を壊す。哲学者に対しては、がんばれと言うよりも、お悔やみを述べるべきなのだ。
pp165-166