前衛とは何か?後衛とは何か?

〈前衛〉とは何か? 〈後衛〉とは何か? 文学史の虚構と近代性の時間

〈前衛〉とは何か? 〈後衛〉とは何か? 文学史の虚構と近代性の時間

 結局、二〇世紀の間に、芸術における文学の地位は、著しく疑わしいものとなった。知的なものそのものの芸術であるといって、ヘーゲルが文学を至高の芸術とみなしていた時代は、いまや終わった。思い返せば、過去二世紀の全芸術史は、美のパラダイムの根本的な変化の歴史として読み直すことができる。それは、芸術の定義において観念がますます重要性を失うことによって、形式の問題と観念の問題が徐々に切り離されてゆく歴史、さらには他の諸芸術、すでに見たように初めに音楽、それから造形芸術、映画、ビデオなどが続々と権力を奪取する歴史である。それらすべての芸術表現の形態のなかで、いまや文学は最も貧しい親族にみえる。文学は諸感覚に一番間接的なやり方で訴えかけるし、形式が他よりもはっきりとはあらわれていないからである。
 文学は、絶対の権限を持って支配していた二つの領土、すなわち知識と趣味から、科学と芸術によって同時に追放された。科学者の言説と、造形芸術の言説とのあいだで身動きが取れなくなり、文学は観念と形式の所有権をいずれも奪われた。
pp.50-51