エレーヌ・ベールの日記

エレーヌ・ベールの日記

エレーヌ・ベールの日記


...それでもときおり、道徳的信条の絶対的価値をほとんど疑ってしまう。みんな、それを歪曲するか、あるいは死をもって答えるのだから。


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...時間がたつのが速すぎる。わたしはバルコニーに寄りかかって、外を見た。二日前から、うっとりするような秋の気候。空があまりに柔らかい光に満ちているので、心は郷愁でいっぱいになる。わたしは、つかまえることのできないものをつかみたいと願った。すべてがあまりに非現実的で、ふたりとも肝心なことはほとんど話さないので、ときおり、何もないのではないかと思ってしまう。
 メトロまで彼を送っていった。でも、きょうは何かがおかしかった。火曜日のようにはうまくいかなかった、説明できないけれど。
(1942年9月7日 月曜日)